建築コラム

能登半島地震から学ぶ:防災の重要性を見直す

2024.03.29

 

 

「明日は我が身」と、今後の地震に対する予防に生かしたく能登半島地震の視察に行ってきました。能登半島地震の現地視察は、目を開かせるだけでなく、自然災害に対する私たちの準備状況について学ぶ上で重要な機会でした。3月20日、金沢市に拠点を置き、そこから在来線で七尾市へと向かい初日の視察。二日目はレンタカーで輪島市に入り、それぞれの被害を直接目にしました。

1日目:七尾市における厳しい現実 七尾市では、報道されていた以上に多くの建物が倒壊しているのを目の当たりにしました。人の気配がほとんどなく、回復への道のりがほとんど始まっていないことを物語る、静まり返った通りがありました。地震直後のまま放置された瓦礫によって、道路は封鎖され、街は麻痺していました。

2日目:輪島市の水問題  崩れ落ちた道の脇を何度も通りながら、輪島市へ2時間半かけて車で移動しました。ここでは状況はより厳しく、倒壊した建物が七尾市よりさらに多く見受けられ、また水道がまだ復旧しておらず、仮設のトイレが旧輪島駅前にまだ置かれていました。これは状況の深刻さを物語る光景でした。

目視だけの私の所見ですが、建物が倒壊に至った5つの主要な要因を推測することができました。

  1. 耐力壁の不足(壁量の不足)
  2. 柱頭・柱脚の金物補強の欠如
  3. 構造躯体の腐食
  4. 地盤の沈下
  5. 基礎の破損
  6. (重量のある瓦に原因がないとは言わないが、建物の構造等によるものが大きいと思った。)

 

これらの要因が組み合わさり、広範囲にわたる破壊を引き起こしたようです。私の観察からは、とりあえず現行の建築基準をクリアしていれば、このような被害をかなり防げたのではないかと思いました。

自己防衛の重要性  この視察は、「自分の身は自分で守る」という基本原則を再確認するものでした。予防を怠ることは、自身の安全を危険にさらすだけでなく、交通の要路を塞ぐなど「社会機能にも支障をきたす」ということがよく分かりました。

未来への対応  地震大国日本において、今現在もまだ多くの建物が、倒壊の危険にさらされています。特に年金生活を送る高齢者の住宅の安全を、どのように持続可能な方法で確保していくかは、非常に大きな課題だと思いました。

能登半島へのこの視察は、私たちが直面している課題と、将来の悲劇を防ぐために今すぐに行動をする緊急性を痛感しました。

最後になりますが、今回の地震で被災した方々に心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。

 

一級建築士事務所 内田建設株式会社

一級建築士 佐藤達明